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防蟻対策

木造住宅の天敵は「腐朽」と「シロアリ」
木造住宅の劣化原因は、1位が「腐朽」、2位が「シロアリ」によるものだと言われています。
「腐朽」と「シロアリ」の被害が起こると、耐震性能は著しく低下します。
阪神大震災で被害の大きかった家屋や倒壊した家屋のうち約8割に「シロアリ」や「腐朽」による被害があったという調査報告もあり、お家を長持ちさせるためには、きちんとした防腐防蟻処理が大切な事がわかります。

予防措置

現在行われている防蟻防腐措置はベタ基礎や通気構造などの構造計画で行う方法、「シロアリ」や「腐朽」に強い樹種を使用する方法、薬剤散布による主に3つの方法があります。
これらは何か1つすれば良いという訳ではありません。
防腐防蟻に優れている桧材でもシロアリの被害を受けた事例はたくさんあります。これは「シロアリ」や「腐朽」に強い樹種というだけで、腐らない木でもなければ、シロアリの食べない木でもありません。
気化する性質をもっている薬剤は、再施工をし続けないと効力を持続することはできません。
大切なことは、しっかりとした知識を持ち、防腐防蟻対策を長期間どの様に行うか、きちんと計画をし、対策をすることです。私たちは下記の3つの要素をバランスよく組み合わせて、防腐防蟻対策を行います。

【1】ベタ基礎、通気構造など構造の計画
【2】「シロアリ」や「腐朽」に強い樹種を選択
【3】ホウ酸や薬剤による防腐防蟻処理

新築当時の耐久性を維持する事は、「ずっといい家」を考える私達にとって譲ることの出来ない大切なことと認識しています。

白蟻について

「シロアリ」という言葉を知らない人はあまりいないでしょう。
ただ、実際にシロアリを見たことのある人は、少ないのではないでしょうか。
シロアリは木の幹に豊富に含まれる「セルロース」を栄養とする数少ない昆虫で、倒木などを土に還すため”森の分解者”と呼ばれており、自然界の食物連鎖においても重要な役割を持った昆虫とされています。
そんな、自然界では必要とされるシロアリが、皆様の住まいにとって恐ろしい天敵となってしまうのです。

森の中では…

倒木を食べる事で森を守ります
倒木を食べる事で森を守ります

木造住宅には…

木造住宅では、シロアリは木造住宅の天敵です
シロアリは木造住宅の天敵です

地球上には約2,500種のシロアリの生息が確認されており、わが国にはおよそ22種が生息しています。
その内、住まいに食害をもたらすシロアリは主に下の4種です。

土壌性シロアリヤマトシロアリ北海道北部を除く、ほぼ全国に分布
イエシロアリ関東以西以南に分布
乾材シロアリアメリカカンザイシロアリ全国に点在
ダイコクシロアリ奄美大島以南の南西諸島と小笠原諸島に分布
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ヤマトシロアリとイエシロアリの特徴

ヤマトシロアリ・イエシロアリは土壌性シロアリと呼ばれ、土の中から蟻道(ぎどう・シロアリの通るトンネル)をつくり木材へ取りつき食害します。
土壌性シロアリにとって水分は非常に重要で、巣や蟻道を維持するために高い湿度を必要とします。
この蟻道は強度が低く、外気や雨風の影響についていけず壊れてしまう程です。
また、シロアリも外皮が薄い為、環境の変化に弱く、外皮が乾燥しきってしまうと生きられません。
これらのことから分かるように、シロアリはけして強い生物ではなく、適切な処置を行うだけで被害を発生させないようにすることが出来るということが分かります。

ヤマトシロアリイエシロアリ
職蟻
(ショクギ)
蟻の写真
蟻の写真
兵蟻
(ヘイギ)
蟻の写真
蟻の写真
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写真で比較するヤマトシロアリとイエシロアリ

ヤマトシロアリ

職蟻は体長3.5~5.0mm、兵蟻は体長3.5~6.0mm。
濡れた材を好み、被害件数はイエシロアリを圧倒しています。
加害部に数千~数万頭の巣を作ります。
巣の規模が小さい為、家を破壊するほどの被害は考えにくいとされています。

イエシロアリ

職蟻は体長3.3~5.2mm、兵蟻は体長3.8~6.5mm。
加工した塊状の巣を形成し、そこから広範囲に渡って活発に餌を求めます。
寒さに弱く、関東以西以南に生息しますが、温暖化や住宅の高断熱化で”前線”が北上しています。
活性の高いイエシロアリの巣では個体数が百万頭にも達すると言われています。
また、乾いた材でも濡らしながら食害していくことと食害の速度も速いため、被害は建物全体に及びます。
近年は外来種のアメリカカンザイ(乾材)シロアリによる被害も増加しています。

アメリカカンザイシロアリ
アメリカカンザイシロアリ (乾材シロアリ)
砂粒状の糞
砂粒状の糞
糞の拡大図※目盛は1mm
糞の拡大図※目盛は1mm

また、ひとつひとつの巣(コロニー)が非常に小さいのも特徴で、わずか1本の柱にいくつもの巣があったりします。
このように、在来種のシロアリとは性質が大きく異なりますが、コロニーが小さいことと他のシロアリより繁殖力が小さく、短期間に甚大な被害にまで発展することは考えにくいとされています。
これは、すべてのシロアリに言えることですが、シロアリの被害にあってしまった場合には早期に発見・個別に駆除が最も大切です。

ホウ酸

シロアリの対策で最も有効な手段と言われていますのが、薬剤散布となります。
しかし、私たちは薬剤散布のみをシロアリ対策とは考えていません。
薬剤散布は空気に触れると気化する性質を持っている為、効果は永遠ではありません。
近年、気化せずに効果が長時間持続する、防蟻成分として「ホウ酸」が注目されはじめています。

採掘されたホウ酸の鉱石

身体に優しく安全性が高いホウ酸

ホウ酸は安定した無機物なので分解されず、また揮発・蒸発することもないため、非接地・非曝露(直接風雨にさらされないこと)の条件下では半永久的に効果が持続します。

私たちは、揮発しない防蟻材として「ホウ酸」が主成分である木材の防腐・防蟻剤を推奨しています。一般住宅をはじめ、数々の重要文化財にも使用されています。
ホウ素は、自然界ではホウ酸やホウ酸塩として存在し、海水や温泉水中に多く含まれています。
また、植物にとって必須微量元素であることから、人間も野菜や果物を食べることで日常的に摂取しています。
身近な所では、目薬やソフトコンタクトレンズの保存液などにも使われています。 カルシウムやマグネシウムなどのミネラル分の吸収にも効果があるといわれており、 サプリメントに配合されていることもあるようです。
人間などの哺乳動物がホウ素を必要以上に摂取した場合には、腎臓の浄化作用で短期間に排せつされます。
ですので、ほ乳類にとって食毒性の成分で、毒性は食塩と同程度です。少量口に入ったり吸入してしまったりといった程度では全く問題になりません。

人・哺乳類 (腎臓あり) 余分なホウ酸塩を体外に排出 安全
シロアリ・昆虫類(腎臓なし) ホウ酸塩が蓄積して死亡 危険

ホウ酸は揮発蒸発することがありませんので床下の空気を汚しません。高気密高断熱構造であっても、床下換気システムであっても、シックハウスの心配はありません。

ホウ酸の高い防腐・防蟻性能は、京都大学などの公的機関により実証されています。
主成分が木材内部へ浸透拡散し、木材中に保護層を形成します。
シロアリは、ホウ酸で適切に処理された木材を食べることで、エネルギー代謝が出来なくなり、やがて餓死します。
また、この効果はシロアリに限らず、ヒラタキクイムシなどの食害を引き起こす甲虫にも同じ作用をもたらします。
ホウ酸は京都大学、ハワイ大学、Forintek研究所(カナダ)の共同研究チームにより、ハワイオアフ島と鹿児島吹上砂丘で10年来野外試験が続けられ、高い防蟻性が確認されています。

また、ホウ酸は木材腐朽菌に対しても有効です。人の健康な皮膚からはホウ酸は吸収されませんが、菌がホウ酸に触れると細胞壁を通して細胞内に入り、一定量の濃度を超えるとエネルギー代謝が出来なくなって死滅します。
ホウ酸はForintek研究所(カナダ)により、年間降雨量1,000mmを超えるバンクーバーで14年間に渡り 野外試験(L-ジョイント試験)が行われ、高い防腐性が確認されています。
また、溶剤に油脂や界面活性剤を含んでいないので、配管や断熱材などの樹脂製品に悪影響を与えません。さらに揮発・蒸散する防蟻剤に比べ、熱に対する安定性も高いことが分かっています。

ホウ酸に防錆性能があることも、様々な実験から明らかになっています。
住宅を長持ちさせる為には、木造住宅の接合金物を腐食から守る事も大切です。

ホウ酸防蟻剤と揮発防蟻剤の違い

ホウ酸を主原料とした防腐防蟻剤一般的な防蟻薬剤
有効成分ホウ酸合成ピレスロイド系など
作用食毒性
  • シロアリが口にすると死にいたる
  • 木材に留まり保護する
神経毒性
  • 薬剤成分がシロアリの神経を破壊する
  • 揮発する薬剤が、忌避効果を生み出す
特徴
  • 揮発・分解しないため持続効果が長い
  • 臭いがほぼなく、室内の空気を汚さない
  • カンザイシロアリの予防にも有効
  • シロアリを近づけない
  • 長年で蓄積されたノウハウが豊富
  • シロアリの駆除には薬剤の使用が必要
  • 初期費用が安価
マイナス面
  • 予防に適しており、駆除には不向き
  • 効果が比較的ゆるやか
  • 一般的な防蟻処理に比べ、初期費用が高額になる(20~30万円)
  • 揮発・分解により効果が失われる
  • 床下の空気を室内へ循環させる工法では使用の制限がある
  • 再施行をし続ける必要がある
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木部にホウ酸を留まらせ、シロアリに食べられない木にします。
分解・蒸発しないため無臭で、効果は長期間持続します。

農薬成分を蒸発させてシロアリを防ぐものは シックハウスの原因になるものも。
農薬は揮発・分解され消えてしまいます。再工事を続ける必要があります。